しまねで暮らし、しまねで輝く  ネクストジェネレーション
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小林泰三さん 30歳面職人という目標を達成させ さらに広がる新しい夢 神楽で織りなす温泉津ライフ




工房は元々実家の倉庫を改装したもの。小学校の頃からこの場所で面作りをしていたという。仕上げの筆入れをするのに最適な場所。



残念ながら3年連続の雨天となった海神楽。雨天時の会場「温泉津まちづくりセンター」では、造形大学の学生たちが急ピッチで設営。  



海神楽では小林さんも演者として出演。「道返し(ちがえし)」で鬼(右)を熱演。



山陰本線温泉津駅のすぐ近くに建つ工房は倉庫時代の梁などを生かした印象的な作り。本誌の表紙写真でも分かるとおり、線路脇も作業スペースとなる。



左のシンプルなものが舞面、大きい板張りのものが飾り面、下の小さな板張りのものは、観光土産用の素焼き面。




幼い頃からの夢を実現させ地域活性と後継育成を目指す
 幼い頃から神楽に親しんできた小林さんが、この道を志したのは小学4年生。好きが高じて神楽面が欲しくなった小林さん。その面を製作していたのが後に師匠となる、神楽面職人・柿田勝郎氏。
 この出会いで自らも職人になることを決意。5年生からは弟子入りもして、高校時代にはかなりの腕前になっていた。
 「高校卒業したらすぐに職人になろうと考えていたんですが、父親の猛反対にあいまして(苦笑)」
 「もっと世間を見てこい!」という父親の言葉に渋々納得した小林さんが選んだのが、京都造形芸術大学だった。
 「作品を一つ作るだけで満足している自分とは違って、スケールの大きい制作に取り組む同世代の仲間に出会い、衝撃を受けました。世間は広かった」。
 『社会人』を経験したかったことと、多くの事を学んだ大学への恩返しの意味もあり、卒業後も職員として大学に残るが、その頃(平成16年)に始めたのが、今も続く「海神楽プロジェクト」。
 「『芸術』という、社会で発揮することの難しい力を活かす場を学生たちに提供したいという気持ちから始めたんです」。
 大田市福光海岸を舞台に行われるこのイベントでは、毎年20名前後の学生が参加。設営だけでなく演者になることで地域と一緒に神楽を盛り上げている。
 小林さん本人は、27歳で職員を辞めて帰郷、工房を設立。翌年の結婚を経て現在に至る。「帰郷し独立してみて分かったのは、地域活動も重要ということ。神楽に関わるということは地域に関わるということなんですね」。
 今後は神楽面作りの教室にも力を入れていきたいと小林さん。神楽に興味をもってもらうため、「子ども教室も積極的に実施していきたい。未来へ神楽という文化を残していく為には、今の子どもたちとどう付き合っていくか?なんですよね!」と力強い。小林さんの目は常に未来の地域社会に向いているようだ。

ほんの少しの不便さを糧とした「時間」「人間関係」の大切さ
 高校卒業後、すぐに職人になるつもりだった小林さん。「外に出て本当に良かった。あの時、父に反対されたおかげで気づかされたようなものです」と笑う。
 県外に出たことで気づいたことは、「まずは地元の海が信じられないくらい綺麗なことですね。普通に地元で暮らしていた頃は、そんなことにも関心がなかったんです」。
 そして、サラリーマンから一転、職人として独立してからの暮らしも、「職員時代と違って、すべてを自分の手でまわさなければいけません。制作することだけでなく、生活していくことも考えると、いろいろと不自由を感じることもありますが、芸術の世界では、その苦労や不便が生きる部分もあります。便利すぎると大切な部分が死んでしまうんですよ」。
 金銭面だけでなく、不便だからこそ感じる「時間や人の大切さ」も職人の糧として、日々の製作活動に生かされている。

人と人の巡り会う土地・島根そこから生まれる新たな動き
  島根をして「こんなに魅力のある所はない」と小林さん。海神楽プロジェクトもそうした地元愛から始まったもの。
 「島根は、人と人とが縁あって巡りあう場所だと思います。毎年、温泉津に来てくれている京都の学生たちとの出会いも、その力なんでしょうね。この地域には、不思議な出会いや再会があるし、なにか面白いことが起こる!というワクワク感がある」と小林さん。
 子ども向けの神楽面教室など、長期的な展望で活動をする根底には、そんな思いも宿っている。
●小林さんProfile
大田市温泉津町出身。地元高校を卒業後、京都造形芸術大学(芸術学部芸術学科)へ進学。卒業後は大学職員として5年間勤務する。その後、神楽面職人として独立起業するため帰郷、28歳で神楽面製作販売の「(株)小林工房」を設立、現在に至る。

■ホームページ
http://www.kobayashi-kobo.jp/






よしとさんの暮らす街-松江市-
松江市からは約70q、浜田市からは約65qと、島根県東西の中央部に位置し、松江・出雲市圏と浜田・益田市圏の中間にあたる県央の拠点都市。(人口/約39,000人、世帯数約/16,000世帯)世界遺産の石見銀山遺跡、南東部には大山隠岐国立公園に属する三瓶山、鳴り砂で有名な琴ヶ浜など、歴史や自然が豊富。小林さんの暮らす温泉津町は古い街並みが残る温泉地としても有名。
【石見銀山】
石見銀山
【温泉津温泉】
温泉津温泉
【海神楽】
海神楽
戦国時代後期から江戸時代前期にかけて最盛期を迎えた日本最大の銀山で、当時は世界の銀の3割を産出した。2007年、世界遺産に登録された。 2004年、温泉街としては初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。共同浴場(日帰り温泉)の「元湯泉薬湯」と「薬師湯」が有名。

今年で6年目、温泉津の夏の風物詩となった海神楽。京都造形芸術大学と温泉津舞子連中との活動は、イベント後、学生のなかからIターン者が出るほど、地域の活性化に役立っている。
 
 
 
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