シニアライフ
 

陰山昇さん(60歳) あつみさん(59歳)
宍道町来待 
古民家カフェ「KIMACHI 山花(さんか)」経営
山花(さんか)という名前は「移住し創造するところが私たちに似ている」という、かつて日本に存在した山の標泊民「サンカ」にあやかったもの。最近は焼き物の定義を柔軟に捉え、同じ焼くものとして、パンやピザ作りにも精を出す。「発想が広がっていくこと自体が楽しい」(靖さん)。「頭の中を豊かにすれば生活も豊かになる」(登美子さん)。

家財道具が高山に残っていたり焼き物の発注
が来ていたりと、スローライフどころでない忙し
さ。今後は工房とギャラリーも新設する予定。


こだわりの蕎麦工房もあり、蕎麦をこねる器は
靖さん作の焼き物。自慢の蕎麦は出雲と信州
のよい所をブレンドしているそうだ。


念願の里山カフェで広がる 生涯現役の人生 Iターンはスローライフにあらず
 宍道町来待川沿いにある「KIMACHI 山花」。ひと味違う古民家カフェとして話題を集める、この店のオーナーが、岐阜県高山からやってきた水谷靖・登美子夫妻。
 焼き物職人として、瀬戸、御前崎、高山と渡り歩いてきた靖さん。とくに高山では、100坪もある工房とギャラリーカフェを所有するほど、長く慣れ親しんできたが、「高山は観光地として発展しすぎて、人の生活がない。そんな土地で自分のすべてをはき出してしまう前に、別の場所で新しい可能性を見つけたかった」と職人らしい気骨でIターンを決意。父と同じ道を選び、高山に残る2人の息子たちから「不良老人」という温かい?エールをもらっての再出発だった。
 島根と出会ったのは、平成18年『松江暮らし生活体験ツアー』がきっかけ。【日本の原風景】と【人の暮らし】がIターンのキーワードだった夫妻にとって、「Iターン実現に関わってくれた人々の力に引っぱられました」というくらい、島根の印象は人の魅力がすべて。里山風情の色濃い来待の地域性も、原風景への憧憬を補強してくれた。
 民家の改装は、すべて靖さんの手によるもの。高山からの往復で完成までに8ヶ月という苦労のかいもあり、カフェが完成する頃には、地域との人間関係も築かれていた。「カフェの完成を地域の人が喜んでくれたのが、何よりも嬉しかった」。
 オープン1ヶ月後には、隣の幼稚園から園児を招いてお茶会を催すなど、日増しに地域に浸透している様子だ。
 山陰では見慣れた赤瓦民家に食器から、オブジェ、建具に至るまで、靖さんの焼き物があしらわれる独創のインテリア。甘辛好みの島根人の舌に苦労しつつも、素材と味でもてなす登美子さんの料理。そして、週の半分は靖さんこだわりの手打ちそばも登場する。
 「スローライフなんてとんでもない、まだまだこれから」と笑う夫妻の島根暮らしは始まったばかりだ。

Beans Top> バックナンバー >Vol.33