しまねT.R. 島根のユニーク企業紹介

新しい発想で逆境をはねのける感性豊かな女性に選ばれる湯宿(松江市/有限会社 神の湯)

五感に訴える女性向けの温泉宿

 水の都・松江のシンボルである宍道湖に面した松江しんじ湖温泉。その中に、趣きのある佇まいで目を引く温泉宿「てんてん手毬」がある。

 (有)神の湯が経営するこの宿には、手まりや抹茶茶碗をかたどった露天風呂などを備えた部屋があるほか、約130種類から選べる浴衣、無料で使えるマニキュアなど、随所に乙女心をくすぐる工夫が凝らされている。

 今でこそ若い女性が喜ぶサービスを展開するホテルや旅館は珍しくないが、それを約8年前にさきがけて打ち出して以来、業界で注目を集める宿なのである。

 支配人の安食幹雄さんは、「人間の五感をくすぐること。何をすればお客様に好印象を持っていただき、くつろいでもらえるのかと考えたら、意外と細やかなことだったんです」と女性好みの宿づくりの秘けつを明かす。

再起をかけて挑んだ新感覚の旅館づくり

 「てんてん手毬」の歴史は、現社長である神田裕幸さんの祖父が開業した「神田旅館」に始まる。当時は、宍道湖に流れ込む大橋川のほとりにあったものを昭和41年、宍道湖北岸に源泉が見つかり、旅館団地が開かれたのを機に現在の地へ移った。しかし、温泉の歴史の浅さゆえに、玉造温泉や三朝温泉など、近郊の古くからの温泉地に押されて経営が伸び悩んだ。そんな時に、東京で働いていた現社長がUターンしてきたという。
「社長は、自分が生まれた時からあった実家の旅館がなくなるのを寂しく思ったんでしょうね。帰ってきてから屋号も変えて、新しい感覚で方向転換しようと動き始めたんです」と安食さんは当時を語る。

館内では、明るい色・シックな柄など、色とりどりの浴衣が80種類も用意されている。自由に選んで自分だけの浴衣コーディネートができるのも楽しみの1つだ。

 既存の建物は、古い部分を残しながら少しずつ手直しをして、従来の和風旅館から女性の視点にこだわったかわいらしい印象の宿に変えていった。また、目の前に広がる宍道湖や点在する名所旧跡など、歴史深くのんびり過ごせる松江や島根の魅力を発信することにも力を入れた。チェックイン時には、お客様が自分で点てた抹茶をいただくことで、茶処松江らしさを体験できるサービスも行っている。

 さらに、東京との直行便が多く発着する空港に近いなど、アクセスの良さについてもアピール。今ではインターネットや旅行雑誌の情報をたよりに、中国地方はもとより、関西地方や首都圏からも客が訪れる宿になっている。

UIターン者の経験をサービスに活かしたい

オリジナルの手毬露天風呂のある部屋。シンプルな和室ながら、琉球畳が敷き詰められていることで普通の和室とは雰囲気の違う空間が演出されている。

 都会の喧噪を離れて癒されたいという女性の願いを叶えてくれるこの宿。接客にあたるのは、若い女性スタッフでその多くは地元出身者だ。

 安食さんは、「特にいったん都会に出てUターンした人は、地元の良さも悪さも分かる。Iターンの人も、田舎へ自分の時間を楽しむために来た人のニーズを理解できる。島根以外で過ごしたことのある従業員の経験はサービス向上に役立つので、会社の財産ですね」とU・Iターン者への期待を膨らませる。

 実際に、こうした若い女性スタッフの意見は、宿で提供される食事メニューなどにも取り入れられて、好評を博しているという。
「社長はよく『おばあちゃんの家に遊びに行ったみたいな感覚を持ってもらえる旅館にしよう』と話しています。それは、規模が小さい宿だからこそできるんですよね」。 女性をターゲットに絞った戦略で見事に復活を遂げたてんてん手毬。その先見の明で、何年か後にはまた斬新なアイディアで私たちを驚かせてくれるかもしれない。

会社概要

【設立】 昭和41年5月1日
【代表】 神田裕幸
【本店】 島根県松江市千鳥町73番地
【電話番号】 0852-21-2655
【FAX番号】 0852-26-7460
【資本金】 1,000万円
【事業内容】 旅館業
【HP】 http://www.tententemari.co.jp/

メッセージ

 松江しんじ湖温泉の「てんてん手毬」は、伝統的な日本旅館の良さを残しながら、現代風のしつらいともてなしで女性に喜んでもらえるサービス充実に力を入れています。
  また、国際文化観光都市・松江の魅力やのんびりした島根県人の気質なども、地元の財産としてお客様にPRしています。
  旅館業に携わる人は、その土地の良さを客観的に把握していることで、お客様に安心感のあるおもてなしが提供できます。県外で培った経験を活かしながら島根の良さを伝えたい、くつろぎを提供したいという献身的な気持ちがあるU・Iターン者には働きがいのある仕事です。