しまねT.R. 島根のユニーク企業紹介

新しい交流産業を創造する拠点づくり 訪れる人たちに寛ぎの時間を提供したい(雲南市吉田町/株式会社鉄の歴史村)

市町村合併を契機に、新しい産業開発や雇用創出に取り組む

 1000年以上の歴史を持つ日本古来の製鉄法である「たたら製鉄」をキーワードにした「鉄の歴史村」づくりで知られる雲南市吉田町。江戸時代に栄えた鉄山師の町並みに、古民家を再生した宿「ツーリズムの宿・若槻屋」がある。

 この宿を経営しているのが「(株)鉄の歴史村」である。会社設立のきっかけは、平成16年11月の市町村合併だ。当時の旧吉田村では、合併による地域空洞化を懸念する声が多かった。そこで新しい産業と雇用の場を創出しようと、旧吉田村の有志20名が出資をして作られたのが「(株)鉄の歴史村」なのである。

町内外の人たちが行きかう交流の場を作る

「若槻屋」の建物は、空き家になっていた庄屋屋敷を改装したもの。築100年以上の歴史ある空間は、故郷に帰ったような安らぎを感じさせてくれる。2階には大小3部屋の宿泊用の和室があり、1階には一般客も利用できる「山里かふゑ・はしまん」がある。

店内のショップには「優しい暮らし」をテーマにした雑貨などが並ぶ。自家製のドレッシングやジャムは、無添加無着色で、安全と健康を第一に作られた逸品だ。

 会社設立当時から携わっている支配人の藤原祐介さんは、東京からのUターン組だ。長野県のワイナリーで働いた経験も持ち、農業と観光を一体化させた事業に興味を持ち、帰省することにしたという。
「本当に「手作りの宿」なんですよ。改装の時も図面があるわけでもなく、自分たちでアイデアを出し合って作ったようなものです。メニューも、試行錯誤をして作りました。何から何まで、私たちの思いがこもった空間や料理ばかりなんです」と、宿に対する思いを語る。

 「若槻屋」オープンから1年後には、特産品の開発・加工もスタート。今は、地元で採れる野菜やフルーツを使ったドレッシングとジャムの製造を行っている。
「旬の時期に収穫して加工するのが、おいしさの秘訣。素材によって作り方も工夫を凝らします。ジャムなどは、着色料なしでもフルーツの鮮やかな色を活かした製品ができるんです」
製品は「はしまん」に並ぶほか、インターネットでも販売している。現在、新しい製品の開発も行っているという。

UIターンのモデルとなる職場にしたい

 藤原さん以外の2名の女性スタッフは、福岡と宮崎出身だ。まさにU・Iターン人たちが働く、モデル的職場なのである。

 藤原さんは、自分の経験を踏まえて、「都会から田舎へ移るとなると、価値観や生活感が大きく違うので、とてもハードルが高く感じられます。だから、もっと若い人の目線での田舎暮らしの楽しさを、目に見える形で伝えていきたいんです」と語る。
「まちづくり」というと、どうしても行政が主導になりがち。そんな中、身軽に動ける民間企業としての強みを生かして、今後も事業を展開していく考えだ。
「目標と言えるかどうかわかりませんが、町の文化や自然環境、ライフスタイルを、もっと活用していきたい。自分たちも訪れた人たちも楽しめる事業が展開していけたら、と考えています」

 これから夏に向けての観光シーズンが本格化する。「若槻屋」を拠点に、吉田町の素晴らしさを多くの人に発信していってもらいたい。

会社概要

【設立】 平成16年3月3日
【代表】 藤原裕介
【本店】 島根県雲南市吉田町吉田2566番地
【電話番号】 0854-74-9055
【FAX番号】 0854-74-9057
【資本金】 5,000万円
【事業内容】 ツーリズムの宿とカフェの営業、 町の特産を生かした商品の開発・販売
【HP】 http://www.tetsunorekishimura.co.jp/

メッセージ

 ツーリズムの宿「若槻屋」は、鉄山師の町並み「本町通り」の中ほどにあり、私たちはここでカフェと宿泊のサービス業、そして加工品づくりに取り組んでいます。また、地域一体となって、本町通りを中心に、新しい交流産業をつくり出そうと試みています。

 会社のほかにも有機農園やNPO法人、まちづくりグループなどがあり、イベントの開催や体験交流などを行っており、新たに何か始めようというU・Iターン者への支援も積極的に行っています。

 歴史ある美しい町並みのなかで、ものづくりやギャラリーでの展示、お店の出店など、私たちと一緒にこの町をもっと魅力ある場所にしていく仲間を募っています。