自然放牧 伝道師 洲濱正明

祖父母に教わった自然を愛する心で起業

消費者の声に疑問を抱いたのがきっかけ

 大好きな祖父母に連れられ、畑や野山の自然に親しんで成長した洲濱さん。大学に進学し、自然や環境に関わる仕事に就きたいとぼんやり思い描いていた。子供の頃から両親が営む乳製品販売業を手伝っており、大学時代も帰省時には牛乳配達を手伝っていた。配達の傍ら「最近の牛乳は飲むと下痢をする」「スーパーで売っている紙パック入りの牛乳は、昔の牛乳とは違う」という声を幾度となく耳にするようになる。そう指摘するのは、決まって高齢者の顧客だった。
 「今の牛乳と、昔の牛乳は何が違うのか?」という素朴な疑問を抱き、その違いを探し始めたのが、自然放牧牛乳の生産販売という起業への道につながっていった。調べてみると、牛乳の成分が腹痛を引きおこすのではなく、製造段階での脂肪分の分離を防ぐために砕いていること、高温殺菌でタンパク質が熱変し、すぐに腸から吸収されてしまうことなど、市販されている多くが「牛乳」ではなく「加工乳」であることがわかった。さらに“昔の牛乳”に近づけるためには、乳牛を必要以上に人が手をかけない自然の状態で飼育するのがベストなこともわかった。

自然放牧牛乳を普及させるため大学在学中に起業

メンバーや修了生、作家仲間たちによる展示会では、個性豊かな作品が揃う  “昔の純粋な牛乳”作りを実践している所を探すと、国内で2カ所しかなかった。加工段階で手間がかかり、賞味期限も短く、生産量も通常の飼育に比べると1/3程度。それが価格に反映される。しかし、自然に放牧することで、山野の管理が行き届かなくなった中山間地の保全に役立ちながら環境保護ができて、消費者にとって安全で栄養豊富な美味しい食品で、動物福祉という点においてもストレスフリーの環境を乳牛に提供できる。環境分野の仕事という方向性にこれらの現状を照らして、ビジネスとして成立するのではないかと、牧場となる土地探しが始まった。
 大学2年の時、大田市の牧畜家の紹介で牧場と乳牛を手に入れ、何とか商品化の目途がついた。いざ創業すると「大学生の社長」ということでマスコミで取り上げられ、その存在が知られるように。しかし、自然放牧と普通の畜産との違い、その背景や想い、高価格の理由までは伝わりきらなかった。その後啓発活動を行ないながら、地道にリピーターを増やしていっている。
 「理にかなったこと、正しいと思うことを続けていくのは、経営的に決して楽ではありませんが、お客様においしいと言ってもらえることが一番嬉しい」と語る洲濱さんの今後の目標は、バターや生クリームといった乳製品のアイテムを増やしていくことと、牧草地や森林を使って環境教育を実践することだそうだ。幼少から培われた自然への畏敬を事業にぶつける若い力の源は、その素直な心なのではないだろうか。

洲濱正明

1983年、島根県邑南町(旧石見町)生まれ。島根県立大学在学中に、無農薬牧場で乳牛を飼育する乳製品製造販売のシックス・プロデュース(有)を立ち上げる。同社代表取締役として、また自然放牧の有用性を伝えるため「自然放牧伝道師」として活動中。
詳細はホームページにて・・・
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