/「隠岐島文化会館」(隠岐の島町)で行なわれるコンサートやショーなどのイベントで、音響や照明、舞台設営といったいわゆる“ステージの裏方”として活躍する『ステージオペレータークラブKUROKO(くろこ)』。役場、教育委員会、公民館職員など行政機関の職員を軸に平成9年7月に発足(代表橋本賢一)。以後、構成人数の増減を繰り返しながらも、現在は教員や一般会社員、さらに高校生などを含む10代から50代の幅広い年齢層のメンバー20名が、隠岐で行なわれるイベントをバックアップしている。
 活動拠点となる隠岐島文化会館の設立は昭和59年。会館が出来たばかりの頃は、専属の職員もいなかったうえ、専門技術を持つ人材も島内に存在しなかったため、イベントを開催する場合は、機材も人材も島外から用意しなくてはならなかった。
 15年前に大阪からUターンして音楽活動をしているという副代表の鳥井登さん(隠岐の島町観光商工課所属)も、「演奏はともかく、ステージ作り等は本当に苦労していました。」と述懐する。KUROKOの原型になったのも、所属する福祉施設で劇団を支援していた橋本代表が、演劇ステージ作りを独自で取り組んでいたものが母体になっている。会館関係者や行政はもとより、音楽や演劇など、まず表現する側が島内での活動に限界や不満を感じてきたことで、島内で運営できる舞台作りへの機運は高まっていった。

 平成7年に行われた島根県民会館主催の島根県舞台美術研修会(隠岐島文化会館ボランティアスタッフ養成講座)の参加を機に、その参加者29名でボランティアの会(KUROKO)が本格的に始動する。
 研修の内容は、音響から照明、さらにステージ運営と、会場運営に関する全般。この研修は現在も継続されており、近年では益田市のグラントワなどでも研修が行なわれている。「この研修の利点は、県民会館やグラントワなどの大規模施設で本格的な技術が学べるだけでなく、他の施設関係者との情報交流といった、目に見えない部分での財産も確実に蓄積されているんです。」と語るのは、文化会館の職員であり、KUROKO事務局も担当する濱崎倫也さん。こうしてボランティアから誕生した“裏方”集団は、技術や意識の向上と共に、本格的な技術を持つ集団“KUROKO”として育っていく。
 隠岐という土地柄、開催されるイベントも「隠岐しげさ節全国大会」や民謡大会などの郷土色豊かなものから、日野皓正(ジャズ)からサーカス(ポップス)、ウィーン少年合唱団(クラシック)の本格的なものまで多種多彩。地域のイベントはKUROKOがすべて手がけ、島外から訪れるプロのステージは部分的にサポートするのが基本だが、昨年9月に行われた世界的ミュージシャン・日野皓正のコンサートでは、重要な照明を任されるなど貴重な経験値も得た。さまざまな形で支えてきたイベントの中でも印象的だったのは、「平成17年に行われた劇団『華』の公演」と語る濱崎さん。「島内の子どもたち(小中学生)で結成される劇団なんですが、この公演では、保護者の協力もありましたが舞台美術など普段は手がけない部分も担当する、言わば演者以外の裏方をすべて受け持つイベントなので、いろんな意味で印象深い公演でした」。地域のメンバーで構成されたKUROKOの持ち味はチームワーク。今後もさまざまなイベントが待ち受けている。


 そんなKUROKOの当面の課題は「若い世代の取り込み」と濱崎さんは言う。「橋本代表をはじめとする主要メンバーのほとんどがベテランという年齢に達しています。こういうベテランが培ってきた技術を次世代へ継承するのが目下の課題です」。
 こうした課題が急務なのは、高い技術を有したスタッフへの負担を軽減していくという意味合いが大きい。主要メンバーとなるベテラン勢は、本業でも重要なポジションを果たしている場合が多く、KUROKOとの両立が難しくなってきているのだ。当然、専業のいないボランティア由来の集団らしく、ベテランに限らず、本業との両立に腐心するメンバーも多く、20名全員が揃うイベントは稀。また運営資金面でも、公職のメンバーが多いことで有償無償のフォーマットが確定しにくく、現状はいわゆる手弁当的な活動も少なくない。

 こうした諸問題があるにせよ、精力的な活動が継続できている理由は、「島の文化を絶やしたくない」というメンバーの熱い思いがあるからに他ならない。先のとおり、この情熱を若い世代に引き継ぐための具体的なプランとして、音楽活動等を行なう学生たちへ積極的な参加を呼びかけることを検討している。そして現メンバー間での技術の均一化も視野に入れ、さらに全員がオールラウンダーの技術集団となるようにしていきたいという。
 「島外から訪れるプロフェッショナルとの共働作業や、イベントが完成したときの大きな達成感など、離島という地域性があるからこそ可能になるんだと思うんです。そういうKUROKOならではの面白さが浸透していけば、さらにメンバーも増えていくんではないでしょうか」(濱崎さん)。KUROKOのさらなる成長が、隠岐の文化をますます面白くしていくに違いない。
 
ステージオペレータークラブ
KUROKO(くろこ)

■代表:橋本賢一 ■発足:1997年7月
TEL.08512-2-0237
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