小高い丘の上から江の川を眼下に臨み、辺りを山と緑で囲まれた田舎で、陶芸を生業とする福島絵美さん。実は二度のUターン経験者だ。
 松江の高校を卒業後、父の窯元、松江陶苑の手伝いを始める。22歳の時、愛知県の窯業職業訓練校に入って1年間本格的に陶芸を学び、続いて三重県にある伊賀焼の窯元、三田焼で修行を積んでいた。その後、青年海外協力隊に参加し、3年間スリランカで陶磁器の技術指導を行なった。
 田舎の保守的なところが嫌で島根を離れていたが、久々の故郷は彼女の考えを大きく変えた。「視界の3分の2が空と水の宍道湖大橋からの光景、うつろう四季、こんなに美しい自然は他に無いだろう。」そう思ったとき、都会の人が欲しくても手に入らない物が、ここには沢山あるのだと確信した。
 帰国後父親が亡くなり、松江陶苑を継ぐことになる。その後松江市からの申し出により、平成6年に工房を『出雲かんべの里』に移し、作品作りや指導を11年続けた。生活サイクルが安定するのに比例し、「どこかに行きたい」という想いも大きくなっていく。平成17年、遂に『かんべの里』を辞め、青年海外協力隊のシニアボランティアに参加し、チュニジアに行くことにした。ただし今度は「島根県民はやめたくない!」という強い気持ちを持って。
 チュニジアで1年間陶芸のアドバイザーとして活動し帰国。今まで電気窯や灯油窯で行なっていた作陶を、今度は登り窯でもしたいと考えた。だがそれはある程度のスペースを要し、松江では経済的に探すのが困難だった。そこで、新たな土地で住居兼工房を探すことにした。条件は、「母が住む松江から片道2時間以内の場所で、充分な広さとアトリエとしての別棟があり、即入居可能で、家賃は安いところ」と欲張りだったが、あっさり見つかった。役場の親切な対応で迅速に事が運び、今年の4月、美郷町に越してきた。静かで自然が多く、作陶環境としては文句なし。登り窯も、ここなら作れる。ただ、まだ越したばかり。当面の課題は「まずは仕事を始められるように環境を整えること」だ。

 

 

赤や黒を基調とした釉薬が施された作品や、幾何学模様をあしらった、素焼のような土器をモチーフとした野性味のある作風が特徴。


   
それまで気付かなかった地元の魅力に、気付くことができたことですね。他にはお隣の方が、自分で買う必要のない位の野菜をお裾分けしてくれたりすることです。   引っ越してから困ったことはまったく無いです。ただ、アリやムカデといった虫の攻撃はすごいですけど。   今まで作りおきしていた作品を小出しにして運営資金にしているので、早く仕事を始めたいです。今後は日用雑器ではなく、アーティスティックな作品に、力を入れていこうと思ってます。
     
BeanS topバックナンバーVol.24 》UIターンの先輩たち