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「島根をより活性化したい。」
「島根の伝統を守り続けたい。」
様々な人のそんな思いが、島根を少しずつ動かしています。
「動き=風」
島根に風を起こしている活動・人物を紹介します。
今回の紹介は □■□ しまねOSS協議会 □■□

 平成18年9月、県内でのIT産業の活性化、新しい産業の創出など、さまざまな可能性を内包し発進した『しまねOSS協議会』(以下協議会)。
OSSとは、オープン(OPEN)ソース(SOURCE)ソフトウェア(SOFTWARE)の略で、専用サイト等のダウンロードを介し、誰でも無料で使用できるフリーウェアソフトのこと(以下オープンソース)。本協議会の代名詞的存在のオープンソースは、昨今ソフト開発者を中心にIT業界で大きな注目を集めているプログラム言語“Ruby”を指す。Rubyとは、松江市を拠点に全国展開するソフトウェア会社『株式会社ネットワーク応用通信研究所(NaCl)』に所属する、まつもとゆきひろ氏が個人開発したプログラム言語であり、日本発の世界中で使われている最初の言語でもある。従来の言語に比べて、簡易で効率の良いプログラミングを実現させているのがRubyの大きな特徴で、県内の行政機関はもとより、大手ポータルサイトや老舗パソコン通信会社に採用されるなど、世界規模で実力が認められ波及し続けている。
 協議会の発起メンバーであり、まとめ役としても重要な役割を担う、島根大学法文学部・野田哲夫教授は、「私も経済の専門家として、オープンソースが地域産業の発展に繋がるという確信はありましたが、無料のソフトから、どういうビジネスが生まれるのか?場所を特定しないIT分野を島根にどう定着させるのか?という難問がありました。そういう意味でも、まつもと氏とRubyは、協議会に欠くことの出来ない存在でした」と語る。まつもと氏という唯一無二の存在を基盤に、Ruby技術者育成とIT産業での地域活性化を目指し、協議会はスタートした。

 現在協議会は、松江テルサ別館2階『松江オープンソースラボ』を拠点とし、参加する県内IT企業から数名のRuby技術スタッフが常駐している。その他にも、県内外の企業や技術者のセミナー等の活動で活況を呈しているが、協議会発足当時は、オープンソースでの企業運営に疑問や不安を持つ県内企業が多く、思うような賛同が得られなかった。しかし、次第に世界的な時代の潮流となっていくオープンソースの注目度とともに、わずか数社での船出となった協議会の参加企業も増えていった。
「USツアー」として、約7000社のハイテク企業が集積しているシリコンバレーへ視察。写真は「Sun Microsystems」にて。


 こうした流れの中で、協議会がしっかりと地に足を付けた活動を可能にしているのは、やはり開発者であるまつもと氏の存在を抜きに語れない。先頃行われた協議会主催の、ITのメッカ、シリコンバレーの視察ツアーでも、現地の技術者たちから予想以上に熱い注目を集めた。このことからも、もはや優秀な技術者としてだけでなく、カリスマ化したまつもと氏が浮かび上がりつつある。
 Rubyが開発された当初からその将来性に着目し、まつもと氏を島根に招聘し、ともにRubyを育ててきた井上浩NaCl社長は、「彼のようなスター性のある技術者は、存在自体が吸引力となり、スキルとモチベーションを備えた技術者を、島根に呼び込む効果があります。すると、Rubyがさらに大きな市場を獲得した時、『Rubyの開発は、優秀な技術者を多く抱える島根のIT企業に』という構図が作り出せる。その時、IT産業の中でようやく島根という地域性に意味を持たすことができるのでは」と語る。Rubyのニーズが世界規模で日増しに高まりつつある現在、県内IT企業の技術者育成が協議会の尚早な課題となっている。


取材した日も全国から意欲溢れる若い技術
者が「松江オープンソースラボ」に集い、まつ
もと氏の説明を熱心に聴いていた。
まつもと氏のモットー“Enjoy Programming”
どおり、堅苦しくなく楽しい雰囲気でディスカッションは進む。
 「Rubyで構築している松江開府400年記念サイトでは、サイトを訪れた人々が直接情報を書き込めるなどの機能を持たせる予定で、Rubyを身近なものに感じていただけたらと考えています」と今後はユーザーとの関わりも深めていきたいという野田氏。さらに「ゆくゆくは世界中のRuby技術者・開発者を集めたワールドカンファレンスを松江で実現させることで、“島根=Ruby”をさらにPRしていきたい」と続ける。これまで一次産業主体だった島根県に、 “IT”という産業の可能性を見いだした協議会。最終的にはRubyというデジタルツールとは対照的な、“フェイス・トウ・フェイス”で作り出す地域の活性化も包括する。ネットワークが島根県を元気にしていく未来はすぐそこに広がっているようだ。
BeanS topバックナンバーVol.23 》しまねの風