定年を待たず決断したIターンで、
 理想のセカンドステージへ

中村徳三さん(58歳)
移住時に残されていた廃材などを使って、徳三さんが作り上げた囲炉裏のある工房「懐古庵」。今は主に、廣子さんの工房として使われるが、夫婦水入らずで過ごすひとときも、Iターンライフで得た、かけがえのない財産。

東京の企業で、サラリーマン生活をおくる中、積年の夢だった田舎での生活を実現するため、早期退職を決意。平成12年、妻・廣子さんとともに、埼玉県よりIターン。現在は、自宅を含む、2.4haの土地を所有し、観光クリ園を営みながら、マイペースな田舎ライフを満喫している。
   
島根県へのIターンのきっかけを教えて下さい。
自宅の近くに畑を借りて、野菜を作って日頃のストレス解消していたくらい、田舎での生活に、強い憧れがありました。もともと、都会での生活が性に合ってなかったんでしょうね。早期退職して、こちらに来たのも、体力、気力とも、余力があるうちに、第二の人生をスタートしたかったから。タイミングよく、子どもの手が放れた(娘さんの大学卒業)ということも、大きな転機になりました。
     
Iターンするに当たって、よかった点、苦労した点はなんですか?
よかったのは、もちろん、この環境ですね。田舎生活を真剣に考え始めた頃から、インターネットなどを使って、ずっと山あいの移住地を探してましたからね。方々調べて、実際に見学しに来たのは、ここだけでしたが、山間地であることはもちろん、住居、クリ園つきという条件に、「ここだ!」と思いました。そういうことなので、Iターン当時は、喜びばかりで、苦労は感じませんでしたね。
   
島根県での仕事や地域との結びつきなど、現在の暮らしぶりを教えて下さい。
5年前から、本格的に観光クリ園を始めました。この辺一帯は、町の観光エリアになっているので、それにタイアップして、ウチのクリ園を収入源にしようと考えました。PRも、どこにも頼らず、自力でやっています。まあ、山のてっぺんに都会から移住してきた珍しい夫婦みたいな感じで、新聞や、ケーブルテレビさんが、取材に来てくださるので、そのへんは助かってます(笑)地域の人たちも好意的に迎え入れてくれて、今ではウチが地域の寄合場みたいになって、いつも賑やかですよ。
   
現在の生活について、満足しているところ、そうではないところを教えて下さい。
こちらに来た当初は、自給自足に憧れはありましたが、現実はそんな簡単にはいきません。観光クリ園のほうも、天候に左右されますから、はっきりいって、安定した収入源としては厳しいですね。不足分は、サラリーマン時代の蓄えで補いながらやっています。ただ、それらの問題の解消は、これからの目標にもなって、逆にエネルギーが湧いてきます。暮らす環境としては、ちょっと車で出かければ、何でも手にはいるし、大きな病院もあるし、なんの不自由もありません。
   
今後、どのように島根で暮らしていきたいですか?
農作業の合間を縫って、人形づくりの名取りをしている妻のための工房を作りました。工房は2つあって、片方は、自分のための木工用の工房のはずだったんですが、現在、両方とも妻の工房として使われてます(笑)でも、こんなよい環境の中で、物づくりに没頭できるなんて、時間に追われながらの都会生活を考えれば夢のようです。おかげさまで、夫婦の会話も、こちらに来てから、グンと増えました。これからも、こんな心にゆとりのある生活を大切にしていきたいです。
   
これから田舎暮らしを考えているみなさんにアドバイスをお願いします。
とにかく、早く、積極的に、地元に溶けこむこと。これが一番大切です。そういう意味でも、人間関係などにストレスを感じて、田舎生活を考えておられる場合は、都会よりも、人間関係が濃密な田舎での生活は、余計に疲れるかもしれません。ただ、Iターンは、それまでの人生をリセットするようなものですから、いろんなことに、現役感覚で挑戦できる面白さ、やり甲斐は無限にあると思います。
   
これから第二の人生に向かおうとする団塊世代のみなさんにメッセージをお願いします。
私たちの世代は、みんな同じ方向に向かって突き進んだ世代。さまざまな努力が成果となって実を結ぶことのできた世代です。だから、第二の人生という、目標を達成するため、どんな困難も打開する力が備わっていると思いますね。もし、そういう目標が見つからなくても、島根に来れば、何かが見つかるはずです。いろいろな可能性が転がっている…島根は、そんなところです。例えば、農業に興味はあっても、知識がないという方でも、必ずバックアップしてくれる機関や人々が存在します。いろいろ悩まずに、まずは行動を起こしてみてください。
団塊の世代の皆様へ
島根県地域振興部 部長 藤原義光

 「団塊の世代」と言われる人たちが、定年退職を迎えます。ふるさとへの想いを持ちながら都会に出た人たちに、「定年退職後の人生は自然の豊かな“ふるさと島根”で喧噪から離れゆったりおしゃれに過ごしてもらいたい。」と、昨年の3月に知事から島根県出身の方へUタ−ンを呼びかける手紙を出しました。従来からの若者定住に加えた取り組みです。  60歳といってもまだまだ現役です。都会で培われた専門的知識や技術、経験を地域活性化のために発揮してもらえればと思います。島根県が策定した高齢社会ビジョンは「おしゃれで凛とした生涯現役社会しまね」をスロ−ガンにしています。
 この度、島根県では、団塊の世代を含む幅広い年代のUIタ−ンを具体化・確実化するため、既存のUIタ−ン施策に加え、平成18年度から新たに、@ふるさと島根定住財団によるUIタ−ン希望者を対象とした無料職業紹介、A県内の住宅関係業者がUIタ−ン希望者の住宅ニ−ズに応じ、相談から斡旋、建築までを一貫してフォロ−、B中山間地域研究センタ−や農業大学校でのUIタ−ン希望者や既にUIタ−ンをした人を対象とした農林業等の基本的な技術に関する講座に取り組むことにしております。
 これらの施策を通じて、ひとりでも多くの方々にUIタ−ンいただけるよう、県、市町村、ふるさと島根定住財団、民間団体等の関係機関が一体となってUIタ−ンの推進に取り組んで参りますので、UIタ−ンについての情報や相談が御入用であればお気軽に御連絡ください。




山間地らしく、斜面に広がる中村家の土地。クリ園がシーズンオフのこの時期は、炭焼 きや、大工仕事に精を出す。そして、一面真っ白に染まる冬期が過ぎると、素晴らしい緑の季節がやってくる。



真多呂人形教授の称号をもつ、妻・廣子さんの作品が所狭しと飾られる。人形製作が地域の人々とのコミュニケーションとして、大いに役立っている。

「自然に囲まれた山間地で第二の人生を」という、希望どおりの環境を獲得した中村さん。Iターン当初の熱い気持ちを持続させながらも、冷静に的確に、セカンドステージを踏みしめているようです。

BeanS topバックナンバーVol.19 》イキイキ団魂パワー