隠岐の島町の中村地区に、しまね田舎ツーリズムの制度を利用して誕生した民泊施設。  TEL.08512(4)0636
土井幸子 さん
陶芸、裂き布草履、ツル籠、古い蚊帳を使った暖簾などの作品制作と、技術指導を精力的にこなす一方、平成17年より、自宅離れを利用した民泊をオープンし、早くも根強いファンを多数獲得している。生粋の隠岐人。

 隠岐の島町(島後)の玄関口、西郷港のちょうど反対側に位置する中村〜西村地区。隠岐の島町最北端・白島海岸や、よろい岩、かぶと岩など、景勝地が数多く点在する勇壮な横顔とは裏腹に、昼間でもさざ波の音が聞こえてきそうな、人と自然が共存する静かな地域だ。
 そんな西村で、去年9月から、民泊の宿「古民家・幸(さいわい)」を始めた土井幸子さん。玄関をくぐると、広い三和土に、枯れた上がり框と、めっきり見かけなくなった古き和の意匠が、演出ではなく、機能的に備わっているのが嬉しい。天井の大きな梁を眺めながら声を掛けると、「いらっしゃいませ」と土井さんの優しい声が返ってきた。「以前は、我が家の個人的なもてなしの場として使っていたんですが、その頃は、古くて恥ずかしくってね。でも、訪れるひとたちみんなが「いい!いい!」と言ってくださるので、最近では、この家の良さを再確認しているところなんですよ」と相好を崩す土井さん。土井さんのご主人の生家をそのまま利用した「古民家・幸」は、古き日本の、そして、古き隠岐の知恵と工夫がいっぱい詰まった、風情あふれる民泊の宿として訪れる人々を包み込んでくれる。また、チェックイン&アウトもとくに決めないうえ、宿泊客の要求するさまざまなニーズを新しい接客サービスに昇華させるという、フレキシブルな精神も、「幸」のユニークさに拍車をかける。そして、こういう心がけこそが、土井さんと客との間に深い絆を生み出し、宿の大きな魅力を形成している。
 今でこそ、民泊の女将として、極上の“もてなし”の腕をふるう土井さんだが、陶芸から、ツル籠、裂き布草履、のれん作りなどの工芸品作家として、工芸教室を開催したり、地元の中学校で陶芸の特別講師をしたりと、精力的に創作活動をおこなう、もうひとつの顔も持つ。「若い頃から、物作りをしたり、習い事をしたりが大好きで。とにかく、じっとしてるのが嫌いでね。幾つになっても、生き甲斐を探してる感じ。ここ最近は、民泊のおかげでますます忙しくさせてもらってるんですよ」と土井さん。そんな特技を生かし、体験型民泊として、直接指導の陶芸や、工芸品作りが体験できるのも「幸」の醍醐味。さらに、周辺の散策を満喫した後は、夜のお楽しみ「さざえ村」での夕食となる。中村海岸にある「さざえ村」は、名前のとおり、特産品のサザエなど各種産品の加工を始め、独居老人のための配食サービスなどの福祉事業。そしてもちろん、地元の海の幸がふんだんに味わえる食事処としての機能を併せ持つ、複合施設。「幸」の宿泊客は、「さざえ村」で舌鼓を打つのが決まり事。これは、土井さん個人と、地域行政の連携がもたらす、新しい地域振興のフォーマットとして面白い。
 もともと地域活性化に熱心な土井さん。この地区の至る所に設置された花壇も、土井さんが中心となっておこなってきた地域活性化運動の成果のひとつ。「こういう田舎が元気になるためには、やっぱり“人の交流”が大切だと思うんです。外部の人々にも「幸」をきっかけに、ここの魅力を発見してもらい、地元の人たちにも、この地区に人が訪れることを意識してもらい、大いに元気に頑張ってもらう。そのためのお手伝いができる自分を誇りに思います」と土井さん。地域を元気にするため、まずは率先して行動する。それを実践した人の言葉はシンプルだが心に響く。
おっちら土井流    
作品
「幸」からの眺め
葉っぱを使った焼き物の皿や、古い蚊帳を使った暖簾など、ちょっと周りを見渡すと、さまざまな材料が私にアイディアをくれるんです。物作りをする人間にとって、隠岐は素材の宝庫なんですよ。 去年、念願だった自分の窯を手に入れました。それまで地元の窯元まで通っていたんですが、「幸」のオープンを機に、これからは、もっと自由に、そしてみなさんのために窯を活用していきたいですね。 ここにいらっしゃった方々には、まず、この眺めを見ていただくんです。この辺りの海の眺望も自慢のひとつですね。夏場など、庭のテーブルでのひとときも、海風がそよいで来て、本当に気持ちがいいんです。
 
     
「島根でおっちらライフ」では・・・

    島根県隠岐の島町(中村地区)で「ゆっくりと、ゆったりと、落ち着いて」などの意味合いで活用される方言の「おっちら」(出雲地方ではおちらと)「島根でおちらとライフ」では、島根の町や文化、自然と調和しながら生活を楽しんでいるグループや人物を紹介するコーナーです。
 
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