ユーアイターンドリーム 寺田栄里子
パーソナルデータ
黒岩潤さん

出身地/出雲市 住まい/京都市→出雲市
職場
/旭日酒造有限会社

平成13年4月Uターン
大学卒業後、京都の老舗茶舗に入社し、店頭販売と並行して自分の提案企画が実現する喜びを感じながら、商品やお客さまの大切さを学ぶ。3年間勤めた後にUターン。同じ大学の2年先輩で、広島県福山市出身の幸一さんと今年9月に結婚。夫が、大手企業の営業マンから、造り酒屋を自分と共に盛り立てる人生を選択してくれたことに、驚きと感謝だ。酒造りに関して学ぶべきことはたくさんあるが、夫婦としての熟成と共に、着実に厚みを増したいと、互いにエールを送る。 -

入り口に立ったばかりだけれど、
いつか「自分の味」と言えるお酒が造り出せたら、最高です。


「お酒は嗜好品ですから、自分の好みで造るだけではお客さまに受け入れていただけません。しかし同時に、造り手の主張がなければ信頼を得ることもできません」。寺田栄里子さんは言葉をかみしめるように丁寧に語り始めた。傍らで、夫幸一さんが包むように見つめている。「酒造りは明確な答えの出ない世界。伝統を守りながら新しい味を造り出すという、奥の深い道に足を踏み入れたことを実感しています」。

栄里子さんは、創業明治2年という老舗の造り酒屋の十代目当主を父に、三人弟妹の長女として生まれた。家を離れた学生時代にも、繁忙を極める冬の仕込みの時期には帰省し、もろみの温度管理などの手伝いをしてきた。大学卒業後は京都の老舗茶舗に就職。その後、祖父の他界や社会状況の変化により負担が増していく父の姿を見て少しでも力になればと故郷に帰る決心をした。
栄里子さんの帰郷は、当時関東で営業マンをしていた幸一さんにとっても人生の大きな転機だった。結婚を考え始めた当初、お互いに生活は幸一さんの勤務地で始めるのが自然だと思っていたからだ。栄里子さんから仕事に関する相談を受けていたため将来的には、酒造りや商売を手伝っても良いという思いもあったが、まだ先のことと考えていた。
しかし、実際に家業を手伝い始めた栄里子さんは、「一緒に経験する“今”が、会社や家族にとって一番大切な時期」と痛感。遠く離れた幸一さんに自分の思いを話し、決断をゆだねた。決別も覚悟した。
幸一さんは、社長である栄里子さんの父とも幾度となく話し合い、結論を出した。「栄里子さんを支え、一緒に家業を盛り立てること、そして日本酒をもっと若い人にも楽しんでもらえるようにすることが、自分のやるべきことだ」。幸一さんの前向きな気持ちが、栄里子さんには何物にも代え難い力になった。彼は、酒造りに関する勉強を始め、今冬の仕込みから実際の酒造りを体に覚えさせる。私生活と同時に、本気の二人三脚がスタートした。
『旭日』の清酒は冬の間、出雲杜氏率いる蔵人たちが醸造する。栄里子さんは現在、貯蔵酒の品質管理や成分の分析、商品詰めや包装などを行っている。その他、地域でのイベントはもちろん、東京や広島など県外へ販売促進で出かけることも多い。また、これまで父が一人で行ってきた、最終的な商品の味を決める仕事も勉強中だ。同じ年に仕込んだものでも貯蔵タンク別に個性の差が出る酒を、微妙な割合で混ぜ合わせ、いかに定番の商品としての味がコンスタントに出せるかが信用の要だからだ。「経験を積み重ね、いつの日か、これが『旭日』の味、自分の造った酒だと誇りを持って言えるようになりたい。勇気づけていただいている人たちのためにも、いつかは自分が元気を与えられる立場になりたいと思います」。
出雲の地へ根を降ろした二人が、父譲りの誠実な酒造りの道を、一歩踏み出した。


社長さん(父)に聞きました。
(代表取締役社長・佐藤誠一さん)

清酒に対する思いを栄里子は持っていると思います。利き酒の能力は私より上かも知れません。造りたての新酒は赤ちゃんのようなもので、そこに時が加わって味わいが出てきますが、利き酒をしながら一つ一つの個性を見極め、管理し、皆さまにに分かってもらえる商品作りが大切です。いい酒を世の中に送り出すまでのすべての工程に真心を込め、自分の「旗」になるものをつかまえること。そして夫婦二人で、本物の分かる職人になってほしいと願っています。
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黒岩潤さん
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お気に入り島根
早朝の出雲大社の清々しさが、とても好きです。幼いころから毎年正月2日の早朝に、家族揃って初詣に出かけていますが、まだ人がまばらで辺りの空気も澄んでいる境内では、本当に神様に会える気がするんです。特に、本殿を囲む瑞垣のぐるりを巡るのが好きです。本殿の後ろ側にある緑濃い森の雰囲気もいいですよ。
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