ユーアイターンドリーム 寄川和生
パーソナルデータ
那須賢治さん

出身地/栃木県 住まい/栃木県鹿沼市→知夫村
職場/NPO法人「なごみの里」

平成15年5月Iターン
高校卒業後、地元のフードセンターに就職。25歳のとき、目の病気(ブドウ膜病)が原因で完全に失明。31歳で埼玉県内のマッサージ師養成校(3年間)に入学し、免許取得後は栃木県那須町のホテルの専属マッサージ師となる。その間、東京・代々木の日本青年奉仕協会を通じて、「なごみの里」の活動を知る。平成15年4月に初めて知夫村を訪れ、3日間のボランティア体験を経た後、「なごみの里」に就職を決意。現在は職場近くの借家で一人暮らし。 -

心のレンズに知夫村の青写真が映るまで、
シャッターチャンスをねらい続けていこうと思います。


隠岐諸島の最南端、知夫里島(知夫村)。栃木県で生まれ育った寄川和生さんが、人口約800人のこの島の一員となったのは、今年5月末のことだ。新しい職場は、薄毛地区にある民間非営利団体(NPO)「なごみの里」(柴田久美子代表)。平成14年4月に開設された、一人暮らしの高齢者を24時間体制でお世話する“看取り介護型”の施設だ。現在、3名の入所者が柴田代表をはじめとするスタッフや有償ボランティアに支えられながら、以前は地区の集会所だった古い一軒家で大家族のように生活している。
「家族や親戚たちは、口を揃えて反対しました。“隠岐の島ってどこにあるの?”“そんな身体で働くなんて前例が無いし、勤め先にも迷惑がかかるだけだ”と」。
寄川さんは、25歳で完全に視力を失った視覚障害者だ。以来、生活は一転。失明したという事実を、様々な葛藤を抱えながら受け入れて来た。点字による翻訳・タイプライターでの筆記術の習得。そして、マッサージ師免許の取得。ようやく栃木県内のホテルで専属マッサージ師として自立したころに、一つの転機が訪れた。
「毎日の生活の中で生まれた疑問が、日を送るごとに波紋のように大きくなりました。自分が望んでいるのは利益追求型の生活ではなく、人に愛情を持って接し、誰かの役に立ちたいということ。その場所を探したいと考えたんです」。かつて22歳の1年間を、宮崎県の精神病院でボランティア活動に費やした。その間、人の行動が、どれだけ心の動きに左右されるかを肌で感じたことが思い出されたのだ。
そんなとき、「なごみの里」の活動を講演で全国に発信している柴田代表と、日本青年奉仕協会で巡り合う。やさしさを信念に持ち、高齢者が慣れ親しんだ故郷で最期を迎えるまで介護を行う姿勢に、深い共感を覚えた。「私たちが、あなたの“目”になります…」。柴田代表のひと言が、不安を抱く寄川さんの背中を大きく押した。
「なごみの里」での勤務は朝7時から夕方6時まで。3度の食事は、村のボランティアの人が作ってくれる家庭料理を、施設内の広間で入所者やスタッフたちと食べる。寄川さんは、入所者の一人の食事介助を担当。実際に食べ物を口に運んであげることは難しいが、言葉をかけながら側で付き添っているのも重要な役割だ。そのほかの時間は、入所者がベッドを並べる広間の片隅で、点字タイプライターを静かに叩く。「厚生省の統計では、全国に視覚障害者は約30万人。でも、点字タイプライターを使えるのは、その内の10%ほどだそうです。僕自身、点字を覚えるまで約2年かかりました」。
その苦労を乗り越え、寄川さんは一視覚障害者の視点から知夫村の人たちの生活や「なごみの里」の活動などをレポートにまとめ、全国の点字図書館、出版社、そして放送局などに発送している。そして、いずれは知夫村を拠点に全国の視覚障害者でネットワークを作り、視覚障害者と健常者の相互が理解し合えるよう“橋渡し”的な活動をしたいと願う。「この島で自分に何ができるのか、今は暗中模索の日々。でも、可能性は無限にあると信じています」。
障害を越えて自分の進む道を見つけた寄川さんと、そのチャレンジをごく自然に受けとめた「なごみの里」の人たち。縁あって集った生身の人間同志のふれあいと強い絆が、静かな時間の中で育まれている。


先輩に聞きました。(看護師・野田淳子さん)
寄川くんは自分自身も障害を抱えながら、その上で自分にできる事を探しています。知夫村の方言も積極的に覚え、入所者や職場の仲間達と内面的なコミュニケーションをとりたいという一生懸命な姿勢が、こちらまで伝わってくるんです。実際、寝たきりのおばあちゃんが、逆に寄川くんを気遣うことで生活にハリを見出すことも。ユーモアがあるし、本当のやさしさとは何か?を周りに気付かせてくれる人です。
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那須賢治さん
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お気に入り島根
潮風と磯の香りが心地よい知夫里島。栃木の山で育った僕にとって、毎日の生活が新鮮!この感動はずっと忘れたくないです。将来はマッサージ師の資格を生かして、「なごみの里」の入居者を含め、村内の在宅高齢者を対象に出張マッサージができれば、と思っています。また、霧湖水鳥(キリコ・スイチョウ)のペンネームで同人誌に小説・童話を発表しているのですが、“文壇デビュー”も目標の1つです。
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